波のまにまに。〜すなみちな日々。

すなみち@楽に生きる方法を模索中。40代ワーキングマザー。日常の思考の波間からなるべく丁寧に言葉を拾って紡ぎたいなと日々言葉を紡いでいます。

映画「パラサイト」を見た感想(ネタバレあり)

先日金曜ロードショーでやっていた「パラサイト 半地下の家族」を見ました。

 

率直に言います。

面白かったです。

すごい衝撃でした。最初から最後まで、目が離せませんでした。

 

面白さのポイントは、先が読めない展開でした。それでいて、貧富の差を痛烈に描いている。凄惨で、コミカルで、とても怖い。

 

そう、終始私を引きつけたのは、怖さ、恐怖感でした。

 

それは、決して他人ごとには思えない怖さ。自分のいるところとは隔絶した別世界の話に思えなかったんです。この映画の舞台は韓国だけれども、日本も決して笑えないようなところまで来ているのではないかという怖さです。

 

この映画で描かれる半地下の人たちは、決して怠け者だからこうなっているわけではありません。仕事を失い、お金がないために進学できず、安定した仕事にありつけない、社会の構造の溝に落ち込んだ人たちでした。

 

***

 

まず、半地下に住む人たちが絵に描いたようなお金持ちに素性を隠してうまく取り入っていくくだりはエンタメとしてよくできていました。まあちょっとありえない感じもしなくもないけれど、バレそうになるシーンなんかはハラハラドキドキし通しでした。

 

後半はガラリと雰囲気が変わっていきます。

本当の地下に住む人たちに素性がバレ、脅され、揉み合い、流血シーンになります。それでも地上に住む家族たちは優雅そのもの。そんなことが起こっているとはつゆ知らず、淡々と自分たちの恵まれた世界を享受しています。

 

半地下や地下に住む人たちは、上の人たちにとって不可視な存在なのです。いるけれど、見えない。けれど事件が起こって初めてマスコミに報道され、地上に現れ、人の目に触れることとなります。

 

「こんな悲惨な境遇の人たちがいたのか」「なぜ誰も気づかなかったのか。」

日本でも、虐待や殺人、自殺、無理心中、人を巻き込んだ通り魔事件が起こるたび、マスコミは騒ぎ、いわゆる底辺と呼ばれる人たちの実態に世間は大騒ぎになります。でも、見えていなくても確実にそういう人たちはいるのです。そんな見えない人たちのドラマをこの映画は見事に描き出していました。

 

***

 

社会の溝に落ちた人たち。

この人たちは決して怠け者だったわけでも、悪いことをしたわけでも、悪い心を持っているわけでもありません。ただ、そうなってしまって、そこから抜け出せないのです。そんな社会の闇を垣間見たような気がして、怖かったです。

 

映画を見終わって、他の人たちのレビューを読んでみたいと思い、ネットで検索してみました。見事に賛否両論でした。あるレビューなんかは「これのどこが面白いのかわからない」「楽しめなかった」「お茶の間では流せない」とありました。

 

 でも、そもそもこの映画って、「面白い」「楽しませる」「お茶の間で流す」映画じゃないでしょう?

それなのに、すごいエンターテイメントだと感じました。

少なくとも私は、最初から最後まで目が離せなく、引きつけられ、心にずっしりと重いものが残りました。

 

でも、だからと言ってひたすら重い、暗い、見ていられない映画ってわけでもないんです。それこそがこの映画をエンターテイメントと感じる理由でした。

 

最後は少し希望が見えた気が一瞬しましたが、それも騙されかけました。

要するに、地下に住む人たちは一生かかっても上には這い上がれないんだというオチに背筋が寒くなり、また、切なくなりました。

 

私は韓国映画を初めて見たのですが、拍手を送りたいです。