「そして父になる」映画の感想。一緒に過ごした時間こそが全てだと思う。
最近邦画の面白さに気づいて、少しずつ昔のドラマや映画を見ています。
「そして父になる」。 福山雅治主演。カンヌ映画祭で評価が高かったということで、かなり期待して見ました。 とても良かったです。 ところどころで涙が流れました。 と同時に、子育てにおいて大切なものを教えてもらった気がします。
スカした嫌な父親ぶりがはまる福山雅治
まず、福山雅治が演じる主人公がすごくリアルでいい感じでした。 彼は一流企業に勤め、仕事に忙しく積極的に子育てに関わろうとしない父親です。“子どもの取り違え”という局面にぶち当たって初めて、これまでの自分を振り返り、これからの自分を変える必要性を感じ始めます。
この福山父、最初の方で「じゃあ2人とも引き取ってしまえば問題ないじゃん」みたいなことをしれっと言い放つあたり、本当にイヤな奴。
たとえイケメンで、一流企業勤めでもこれじゃあリリーフランキーの方がいいよ。
とか思えちゃうくらい、嫌な奴。 だけど後半、彼がうろたえ、少しずつ変わっていくのを感じて、彼の人間くささを感じました。脚本は福山をイメージして書かれたそうで、納得。龍馬伝よりはまってたかも(!)。
2つの家族の対比が面白い。
子どもを取り違えられた2つの家庭が出てくるのですが、片方が下流家庭、片方が上流家庭と分かりやすい対比なのも面白かった。子どもにとってはピアノもお受験も美味しいお肉も別にそんなに嬉しくなくって、それよりも嬉しいのは「家族と過ごす時間」。ただそれだけなのである。
そういう書かれ方が皮肉だと感じたし、最初は「2人とも引き取る!」と上から目線で豪語していたくせに、気づいたら子ども2人ともリリー・フランキー父側に懐いていて、焦る福山父が面白かった(笑)
福山側の家庭は画面の色合いも単調でシンプルで、会話も淡々としていて、どこか冷たい感じ。リリー・フランキー側は、家もごちゃごちゃして服装も色彩が反乱しているん だけど、それがかえって温かくて気持ちが良くて、会話も賑やかで(そりゃ子どもならこっちだよ。楽しいもん。)と思いながら見ていました。
子育ては、“時間”だよ。という言葉
リリー・フランキー演じる父親が、ぜんぜん子育てに関わろうとしない福山を諭す言葉が良かったです。相手を貧乏家族扱いして、上から目線で見てるのに説教されてしまう(しかも、それが真理を突いている)。 と同時に、親子べったりで過ごす幼年期のいかに大事なことかを感じたな。
福山父が、子どもが自分の写真をこっそり撮っていたことに初めて気づくシーンでめちゃめちゃ泣けました。
子どもはいつも親のことを見ているというのが、言葉で語らずにうまく表現されていて良かったです。
それに対して、福山父が、子どものことを見ていたようで全然見ていなかった。その差が切なくて泣けました。
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両方の父親はそんな感じで両極端なのですが、2人の母親がしっかりしていたので安心して見れました。
自分の子に血のつながりがないと分かってうろたえる父親と、これまで過ごしてきた時間があるからこそ、簡単には割り切れない母親。
そりゃそうだよな、母親だもん。
「なぜ母親なのに取り違えに気づかなかったのか?」というくだりがあるのですが、気づかないよ。赤ん坊なんてみんな似てるしさ。私でも気づかない自信あるよ…。
そんな展開にイライラしたので、真木よう子のセリフがすかっとしました。
「子育てに関わってない父親だからそんな冷たいことが言えるのよ...!」彼女の役柄はサバサバしてて、言うことみんなストレートで気持ちよかったです。 福山の妻である尾野真千子がだんだん真木妻に影響を受けてきて、言いたいことをずんずん言うようになっていて、そこも面白かった(笑)。
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以上、感想でした。今回レンタルで見たけど、あと2、3回は見たい映画です。子ども生まれたパパは見て、ぜひ...!