魔法にかけられて
若い頃、女の子はほとんど全て魔法にかけられている。
いつか、素敵な男性と廻りあって幸せな結婚をする。
いつか、お金持ちになってクローゼットの中を大好きなお洋服や靴やアクセサリーでいっぱいにする。
私はかわいいし、もっと可愛くなれるはずだ。
楽しいことをいっぱいして、キラキラした素敵な私になる...。
けれど、悲しいかな歳を取るにつれて、魔法はだんだん解けてくる。
確かに今は(それなりに)好きな男性と巡り合って結婚し、子供もできた。
そこそこお金を稼いで、ブランドバッグが買えるくらいにはなった。
昔思い描いていたキャリアウーマンにはほど遠いけれど、仕事ももっている。
でも昔かけられていたような魔法にはぜんぜん及ばなかったなあと、心のどこかで気づいている。
そんな女性たちは、今度は自分で自分に魔法をかけようとする。
マイホームだったり禁断の恋だったりブランドバッグだったり素敵なインテリア、子供の教育に熱心になることだったりするかもしれない。
ある意味、自分に魔法をかけ続けることのできる女性たちこそが、真の勝ち組なのかもしれない。
でもそこで魔法の力に頼ることをやめて、現実は魔法とは違うのだと受け入れることこそ、本当の大人になるってことじゃないだろうか。
現実はそんなに素敵なものでも、キラキラでも、永遠の幸せでも全然なかったけれど、探せばそこそこ素敵なものに満ち溢れている。
気づけばすでに自分がそれなりに愛するものたちに囲まれているということ。
時には自分にちょっぴり魔法をかけることが必要かもしれないけれど、そうじゃなくてもちゃんと現実に立ち向かう力がわたし自身にはもうあるということ。
6才の娘を見ていて、わたし自身が魔法にかけられていた幼い頃のことを思い出され、なんともいえない気持ちになります。
そしてそれは確かに幸福な時代だったなあと今になって思ったりするのです。